ブックタイトル第11回 大阪学術大会論文集

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概要

第11回 大阪学術大会論文集

ストレッチングと温熱・寒冷療法の併用による筋伸長の変化~下腿三頭筋への処置による足関節の関節可動域の変化から~各条件による右足関節背屈角度の変化n=16(Mean±SD)Angle(deg)2.右足の各条件による足関節の角度変化は以下の通りであった(図3)。3020100RightStretch Warm CoolPre図3Stretch Warm CoolPost前処置なし群、温熱療法施行群、寒冷療法施行群、どの群においてもストレッチングによる筋の柔軟性の変化はみられた。しかし、統計的有意差はなく、物理刺激を併用した場合の方が効果があがるという我々の当初の仮説に対する結果を見出すことができなかった。■考察本研究の方法では温熱刺激及び寒冷刺激で結果に差がなかった。その理由は、Karamanidisら1)が述べているように、表面的な加熱や冷却因子の適応は、力学的特性に影響を与えないとする結果を支持した形となり、本実験においても、皮膚や組織上部にある筋や脂肪を通して目標とする下腿三頭筋の深部までは、熱エネルギーが伝わっていなかったことが原因ではないかと考えられた。さらに本実験では、刺激部位に腱を含んでなかった。それは寒冷刺激施行時に被験者が不快感を露わにしたため実験の継続が難しかったからである。腱には受容器が多く存在する(中本ら、2005)2)が、被験者の負担軽減を優先し腱を含めなかったことが有意差に出なかった1つの要因と考えられる。被験者から、特に寒冷刺激において、運動時における自覚的な感覚消失により十分な背屈運動を行いづらいとの声が上がっていた。これはFolppら3)の先行研究に示されるように、痛みに対する耐性の変化が可動域へ影響を与えた可能性が考えられ、筋柔軟性の増加はみられたが、神経線維や受容器の閾値上昇における影響が考えられる。このことから、柔軟性の変化を評価するには、感覚的要因を考慮した耐性の変化を考える必要があり、可動域の増減のみで効果を検証するのは本質的な解決にならないことが分かった。また、ストレッチングは先行研究も多く既に一般化されておりDaviesら4)の研究においても、静的にて行った場合は筋の伸張力いわゆる柔軟性を下げ、動的に行う場合では、筋の伸張力いわゆる柔軟性を向上させるとの報告がなされている。この観点から、仮説では、温熱を併用することで静的ストレッチング施行でも、筋のパフォーマンスを向上できるのではないかと考えていた。それはウォーミングアップを考えた場合であるが、様々な研究がされておりその方法も多岐にわたるが、Asmuseenら5)は筋温を38~39℃に上昇させることができれば、特に短時間の運動パフォーマンスを向上させることができるとしている。筋温と体温の相関関係は既に報告されているため、筋温を上昇させておいての静的ストレッチング施行時では、従来の報告を否定できる可能性があるのではないかと実験を行ったが、今回の仮説ではそれを立証することは叶わなかった。■結語本研究を通じ、表面的な加熱の問題点やストレッチにおける柔軟性の評価方法に足関節の可動域測定のみであることは相応しくないことが分かった。今後はこのことをより実証できるような研究を行い、臨床現場に推奨できるような評価手法や、ストレッチングに物理刺激をどう併用すれば効果的に結果を出せるのか、その手段を明らかにしていく研究を続けたいと思う。■参考文献1)KaramanidisK,Arampatzis A:Mechanical andmorphological properties of human quadricepsfemoris and triceps surae muscle-tendon unitrelation to aging and running. J Biomech2006;39:406-417.2)中本智子, and松川寛二. "117.反射性心循環応答を調節する筋機械受容器はアキレス腱部に存在するか?(呼吸・循環,一般口演,第60回日本体力医学会大会)."体力科學54.6 (2005): 477.04