ブックタイトル第11回 大阪学術大会論文集

ページ
42/46

このページは 第11回 大阪学術大会論文集 の電子ブックに掲載されている42ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play

概要

第11回 大阪学術大会論文集

大規模多施設臨床試験の必要性に関する報告山根裕介富山大学大学院柔道整復学講座富山大学大学院柔道整復学講座では、『柔道整復学の構築は、経験医療、伝統医療の柔道整復にScienceを根拠とした検証作業を繰り返し実践することにより理論的に体系付け、医療界におけるアイデンティティを確立し、柔道整復の技術を用いて社会に貢献する役割を担うことである。』を信念に以下の研究を行っている。柔道整復学講座の研究内容1.柔道整復後療法のメカニズム解明1)臨床研究a.b.2)動物実験a.b.c.d.2.柔道整復後療法の有効性に関する臨床的研究(整骨院・接骨院での)多施設臨床調査→統計学的エビデンスの収集疼痛発症および柔整後療法の中枢性メカニズムヒト脳機能画像解析による研究:fNIRSおよびfMRIを用いた神経生理学的研究疼痛発症および柔整後療法の末梢性メカニズムMRI技術を用いた筋硬結の画像化、定量的硬度測定筋痛の動物(ラット・マウス)モデル作製柔整後療法の動物(ラット・マウス)モデル作製QOL向上における柔整後療法の効果筋痛発症および柔整後療法の末梢および中枢性メカニズム解明図1現在、接骨院に来院する多くの患者は、腰部、頚部痛などの軟部組織損傷(筋性由来)の痛みを訴える事が多い。これら軟部組織損傷の痛みに対して柔整整復術の中でも、特に後療法(手技療法、温熱療法、電気刺激療法)を用いて疼痛緩和を目指している。柔道整復学講座では、柔整後療法の有効性の有無を臨床試験により証明し、治癒メカニズム(科学的治癒機序解明)を動物またヒト脳機能画像解析により解明し、柔道整復師による施術の妥当性の証明を行っている。当研究室では、柔整後療法の有効性証明のため整骨院・接骨院に来院する患者を対象とした臨床研究を行っている。医科学の領域では、臨床研究の証明が根拠となり、臨床医療である柔道整復にとってEBMの唯一の証左となる。しかし、この臨床研究には、国際的ルールが設けられており、そのルールに則っての運用が絶対条件となる。当研究室ではその条件の一つであるUMIN(大学病院医療情報ネットワーク研究センター)を介在する大規模多施設ランダム化比較試験を実施しており、このスキームは柔整業界初の試みであり、客観的に治療効果を評価することが可能となる。大規模多施設ランダム化比較試験における最大のメリットは、治癒メカニズムは不明であるが、治療効果の有無については客観的に数値化できるため高い信頼性を有している。次のページの図2は、米国内科学会と米国疼痛学会による腰痛管理のガイドラインを示したものである。現在、整形外科分野における腰痛治療のガイドラインによると、亜急性期・慢性期の腰痛では、表剤熱、徒手療法、温熱療法の治療効果は、得られることが証明されているが、急性期の腰痛に関しては根拠となるデータは得られていない現状である。この急性期の腰痛症の治療効果が得られていない背景は、1)急性期腰痛症に対する徒手療法の有効性に関する論文自体が少ないこと2)臨床試験の方法論的誤りにより、エビデンスレベルが低く評価に耐えられない結果であること3)手技、方法の違いにより、効果へ影響が大きく解析が困難なことなどが挙げられる。以上の背景により、急性期腰痛症の柔整後療法の証明は、明らかではない。39