ブックタイトル第11回 大阪学術大会論文集
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第11回 大阪学術大会論文集
遠隔振動刺激がヒトの触2点閾に及ぼす影響Effect of weak remote vibrotactile stimulation on the two-point threshold in humans振動強度がS2の場合,2点閾は無振動刺激条件(S0)に比べて低下し,触覚の改善がみられた.振動強度がS3の場合,効果はより少ないものの2点閾はS0に比べ低下した.振動刺激がより弱い場合(S1),およびより強い場合(S4,S5)には2点閾に変化は認められなかった.■考察1.振動刺激の周波数特性高速フーリエ変換(FFT)の結果,本実験での振動刺激の周波数は,150Hz近辺にピークが認められた.大山ら(1994)11)は機械的受容器の振動閾値に関しては,マイスナー小体は40Hz付近にて最小閾値を示し,指先での分布密度は,140個/cm 2で,一方,パチニ小体は200Hz付近で最小閾値を示し分布密度は22個/cm 2としている.このことから本実験での振動刺激は主にパチニ小体を刺激していると考えられる.2.触2点閾の改善前回の結果は,ボンフェローニの修正後の符号テストの結果コントロール群と閾値近辺の強度である強度4群との間に有意差が認められた(p=0.4296, n=12,両側)(図3).第2指MP関節PIP関節間指腹部遠隔振動刺激の提示による2点閾の箱ひげ図(n=12)3.5正3.0規化2.5し2.0た21.5点閾1.00.50.012345振動強度図3ボンフェローニの修正後の符号テストの結果SOとS4条件間に有意差が認められた(※p=0.4296,n=12,両側).○印は外れ値.本実験では,さらに閾値に近い強度2群(S2)と強度3群(S3)においてコントロール群との間に有意な差または有意な傾向がみられた.このことは手背部に与えた振動刺激はMP関節付近の指腹部よりさらに遠隔部のDIP関節付近の指腹部での2点閾をも改善することを示唆した.3.確率共鳴本実験で6条件の振動強度ごとに中央値(Me)±四分位偏差(Q)を統計用ソフトRを用いて計算,箱ひげグラフを作成し比較検討した結果,振動強度と正規化した2点閾にはU字型の関数関係が成立することが分かり,統計用ソフトRを用いて計算した結果,S0とS2条件間に有意な差が認められS0とS3の間に有意な傾向が認められた.Collinsら(1996,1997)4)5)は,健康な若者の中指尖端に閾値下のノイズを与えると触感覚が強化されたことを報告し,ノイズの特定レベルを導入することでヒトの触感覚を強化することも減衰させることも出来ることを証明した.前回の自身の実験でも,閾値近辺の弱い振動刺激(S3,S4)を加えると無振動刺激時に比べ2点閾が低下した.本実験においても,閾値近辺の弱い振動刺激(S2,S3)を加えると無振動刺激時に比べ2点閾が低下した.この結果から,正常成人でノイズを付加することにより2点閾の改善が認められることが分かり,またノイズの効果は,ノイズが強すぎても弱すぎても効果は消失し,適度なノイズレベルが存在すること,さらにその刺激は,局所刺激に留まらず遠隔刺激に対しても効果があることが分かった.以上の結果は,ノイズとして振動刺激を遠隔に用いた場合,ヒトの触覚において局所刺激同様に確率共鳴が生ずることを示している.4.振動刺激の提示法振動刺激の提示法はKuritaら(2011)10)の研究のように,指先着用型振動子で局所的に振動を与え,その近傍部位での2点閾の変化についての検討が行われてきた.しかし前回の実験では手背部全体に加えた振動刺激が遠隔部である第2指MP関節付近指腹部での2点閾に及ぼすことが示唆でき,さらに本実験では,第2指DIP関節より遠位の指腹部である指先尖端部でもその効果があり,左手第2指DIP関節遠位指腹部での遠隔刺激の方が第2指MP関節PIP関節間指腹部への遠隔刺激より弱い振動刺激によって触覚の改善が引き起こされることが示せた.このことは簡便で広汎な部位への振動刺激提示でも局所同様の効果が期待でき,振動刺激の実用化あるいは臨床への応用を考えた場合,非常に有用な結果が得られたと考える.5.体性感覚へのアプローチの臨床応用Faisalら(2008)3)は,表面の凹凸認識課題において適度な振動刺激を与えたほうが識別精度が向上し,健康20