ブックタイトル第11回 大阪学術大会論文集
- ページ
- 21/46
このページは 第11回 大阪学術大会論文集 の電子ブックに掲載されている21ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
このページは 第11回 大阪学術大会論文集 の電子ブックに掲載されている21ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。
第11回 大阪学術大会論文集
遠隔振動刺激がヒトの触2点閾に及ぼす影響Effect of weak remote vibrotactile stimulation on the two-point threshold in humans杉本恵理大阪府柔道整復師会専門学校■キーワードstochastic resonance, remote stimulus,vibrotactile noise, touch sense, somatosensory確率共鳴,遠隔振動刺激,触覚刺激装置,体性感覚■AbstractIt has been shown that the presence of aparticular level of vibrotactile noise helps todetect a subthreshold tactile stimulus, via thephenomenon known as the stochastic resonance.However, effect of the site where the noise and thesignal were presented was unclear. Here, the effectof remote noise presentation on the two-pointdiscrimination threshold was investigated innormal participants. In the first experiment,vibrotactile stimulation with different intensitywas applied to the dorsal part of the hand, as anoise. While, the threshold was measured in thepalm side of the bottom of the index finger, usingthe constant stimuli method. Significantimprovement of the threshold was obtained whenweak noise intensity was used as compared withno noise. In the second experiment, the thresholdwas measured in the tip of the index finger, whilethe noise was applied to the dorsal hand as in thefirst experiment. Again, the significantimprovement of the threshold was found with theweak noise as compared with no noise control.These results show that the remote noiseapplication can effectively induce the stochasticresonance and cause the reduction of thethreshold in a relatively wide area, possiblysimultaneously.■緒言確率共鳴は元来,約10万年周期で繰返される地球の氷河期の周期性を説明するために考案されたもので(Benziら,1981)1),信号にノイズを加えることによって,ある確率の下で信号強度が強まり,反応性が向上する現象のことをいう(Wiesenfeld & Moss,1995)2).検出できる限界の強度未満(閾下)の信号に不規則なノイズを加えると確率共鳴により,信号の強度が閾値を超えて検知できるようになる.確率共鳴は生体現象においても認められ,生物が複雑で外乱の多い環境に高度に適応することを説明する基本原理の一つとして考えられている(Faisalら,2008)3).Collinsら(1996 4),1997 5))は,心理物理実験によりヒトの触認知機構に確率共鳴現象が寄与していることを示した.これらの研究では,表面の凹凸認識課題において適度な振動刺激を与えたほうが識別精度が向上すること,および,健康な若者の中指尖端に閾下のノイズを与えると触覚が改善されることが報告されている.またDhruvら(2002)6)は,高齢者の中足骨に限局性の微弱な電気刺激をノイズとして与えると,モノフィラメントを用いて調べた触覚の閾値が低下することを示し,年齢に起因する感覚低下にノイズが有効に働くことを示した.触覚閾値にはモノフィラメントを用いた絶対閾(Dhruvら,2002,Collinsら,1997)および相対閾(Becerenら,2013)7)の測定の他に2点閾が使われてきた.2点閾とは,コンパスやノギスを使って皮膚上の2点を同時に触れたり1点を触れたりするもので閉眼時の2点と感じた最小距離を測るものである.Collinsら(2003)8)は年齢を重ねた糖尿病罹患者の極限法での2点閾を測定し閾値が増大していることに着目し,神経障害を保有する患者の足背に体性感覚を改善するため振動刺激を提示すると,極限法での2点閾が改善されることを確認した.次に極限法での2点閾が改善された被験者のバランス感覚の変化を調査したところ,立位での動揺性が軽減することを見出した.これらの結果から,確率共鳴で体性感覚の運動機能を改善することができれば患者の早期社会復帰が可能で,筋や関節の外傷や脳卒中患者への応用が期待できると述べている.またWellsら(2005)9)は,健康な若者や老人の足底部に様々なノイズを与えて極限法での2点閾を測定したところ,加齢に伴う2点閾の増大はバランス感覚の低下にも関連するが,確率共鳴によって身体の動揺性を低減し安定させること,歩行機能障害の一部を軽減させる効果があることを示唆している.Kuritaら(2011)10)は健常者を対象として,極限法を用いて測定した指先での2点閾が,指先着用型の振動刺激の提示によって低下すること,および運動技能をも向上させることを報告している.このように,2点閾を低下させることは実用的にも臨床上にも有用である.前回自身の研究では, 12名の健常者で手背部全体に加えた振動刺激が,遠隔部である第2指MP関節付近指腹部での2点閾に及ぼす効果を恒常18