ブックタイトル第10回 大阪学術大会 論文集
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第10回 大阪学術大会 論文集
高校女子サッカー選手に発生した大腿骨頚部疲労骨折の2例生し、転位の危険の少ないもの。3型:displaced type。転位のあるもの。Devasの分類は、骨折線の部位からある程度の予後予測が可能であり、治療方針の決定に際し他の分類よりも有用である。諸家も広く使用しており、我々も本分類を採用した。ⅱ.stage分類宮川13)は、安静時痛の有無や画像所見より骨折部のstageを分類した(表2)。宮川の病期分類(一部改変)症状X線MRI安静時痛運動時痛所見所見早期×○骨硬化限局した変化中期○○進展期○○骨折線の拡大骨折線の拡大と転位表2限局した変化だが骨折線は内外側の骨皮質に至る頚部全体の輝度変化、T2強調像で骨折部周囲の低信号域を認める症状が運動時痛のみで安静時痛を認めず、X線画像にて大腿骨頚部に骨硬化像を、MRI画像にて大腿骨頚部に限局した輝度変化を認めるものを早期。安静時痛を認め、X線画像にて大腿骨頚部に骨折部の拡大像を、MRI画像にて大腿骨頸部に限局した輝度変化であるが骨折線が内外側の骨皮質に至るものを中期。さらにX線画像にて大腿骨頚部の骨折線の拡大と転位を、MRI画像にて大腿骨頚部全体の輝度変化とT2強調像で骨折線周囲の低信号域が認められるものを進展期としている。るところである。13宮川)は、stage分類における早期では、1~3週の患肢の安静を、運動痛がなければ股関節周囲の等尺性や股関節に荷重負荷の加わらない種目のOKC筋力トレーニングを行い、その後、治癒傾向にあれば漸次負荷を上げ、治療開始後3か月を目途に現場復帰を考慮する。中期は安静時痛が消失するまで安静を取り、必要があれば松葉杖などにより免荷を行う。経過観察にて骨折部の拡大傾向が認められる場合は、内固定術を考慮する。進展期は、早期の最小侵襲手術固定の考えのもと、緊急手術を行うとしている。以上の報告を踏まえ、我々は、Devasのcompressiontypeであれば、安静時痛を認める中期であっても、画像上安定していれば保存療法適応を、transverse typeであれば、安静時痛を認めた時点で手術療法を考慮するという、独自の治療方針を考案し実行した(表3)。自験例は2例ともcompression type、stageは早期から中期であった。経過観察中、骨折部の拡大傾向を認めなかったため、保存療法適応と判断し、良好な成績を得ることができた。我々の考える大腿骨頚部疲労骨折の治療方針表36)治療丸山ら2)は、Devasのtransverse type、Blickenstaffらの2型、Fullertonらの1型は、早期発見と免荷の徹底にて転位することなく治癒するとの報告もあるが、転位の可能性が高く、大腿骨頭壊死や変形治癒、偽関節の危険を避けるためにもmultiple screwやhip screw等の内固定を勧めるとしている。また転位のある場合は、速やかに愛護的整復と内固定が必要であるとしている。一方、Devasのcompression type、Blickenstaffら20の1型、Fullertonらの2型は、ベッド上での安静)や22松葉杖での完全免荷)を勧める報告と、運動量の制限2のみで治療可能であるとの報告)があり、意見が分かれ7)予後Type分類において丸山ら2)は、compression typeは診断までに期間を要するが、予後良好である一方、transverse typeは診断が早く行えるものの予後不良とされ、手術適応であるとしている。13Stage分類において宮川)は、早期と骨折部の拡大傾向のない中期では、大腿骨頭壊死や偽関節の頻度は10%以下で予後良好としている。一方、拡大傾向のある中期と進展期ではそれらの頻度は25~30%に増加するため、本骨折は早期発見、早期治療が重要であるとしている。本骨折を疑った場合、速やかに医接連携し、診断を確定することが重要であると考える。51