ブックタイトル第10回 大阪学術大会 論文集
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第10回 大阪学術大会 論文集
高校女子サッカー選手に発生した大腿骨頚部疲労骨折の2例2)発生頻度全疲労骨折に占める本骨折の割合は、Asal 7)の590例中6例(1.0%)、Darby 8)らの300例中4例(1.3%)、Brudvig 9)らの5%以下、本邦では太田ら10)の251骨折中1例(0.39%)と報告されている。11)また下肢疲労骨折に占める本骨折の割合は、萬納寺の1~2%、丸山ら6)の257例中5例(1.9%)、大西ら12)の259例中13例(5%)と報告され、稀な骨折とされている。しかし本骨折の初期症状は、自験例のように曖昧であることが多い。それゆえ単なる股関節部痛とされる可能性があり、実際の発生頻度は報告されているよりも高いことが推察される。Kiuruら17)やBergerら18)は、MRIの輝度変化により、疲労骨折を4段階に分類し、Grade1~3では骨折線はないが、骨髄内の異常信号を認めれば疲労骨折と診断している(表1)。骨折線がなくとも、大腿骨頭や頚部の骨髄の変化を早期に可視化することができ、早期診断に非常に有用である。MRI輝度変化による疲労骨折の分類Grade1:STIR像にて骨膜性浮腫像Grade2:Grade1+T2強調像にて骨髄浮腫像Grade3:Grade2+T1強調像にて骨髄浮腫像Grade4:骨折線あり3)臨床症状本骨折は他の疲労骨折と同様、発症初期のX線画像では転位や骨折線を認めないことがほとんどであり見逃されやすい。よって臨床症状から本骨折を疑うことが重13要である。宮川)は、本骨折の臨床症状の特徴を、運動後あるいは運動時の鼠径部痛を自覚することから始まり、安静時にはその症状が消失することが多いという。股関節の可動域は正常な例もあるが、時に内旋制限が認めら6れる。また丸山)は、有痛性跛行など股関節周囲の疼痛が主体だが、大腿部、膝関節、腰部に痛みを訴える場合があり注意が必要であるとしている6)。Hop test(患肢でのジャンプ)にて股関節痛の再現を診る方法もある14)。表15)分類諸家により様々な報告がされている。ⅰ. type分類191Devasの分類()図3d)Devas分類4)画像所見ⅰ.X線画像症状発症後2~4週後に初めて骨折線や仮骨形成を認めるため、早期診断には無効である2)。しかし、他疾患から本疾患の鑑別をする上で重要である15)。標準的な正面X線撮影においては、大腿骨頚部外側は評価しにくいため、股関節内旋位で撮影すると同部の骨皮質や骨梁がはっきりする11)。側面X線撮影においては、ラウエンシュタイン像では頚部が大転子と重なり、頚部の観察に適さない。部軸の側面像である杉岡式側面像であれば、頚部側面が明瞭に描出される11)。ⅱ.骨シンチグラフィ症状発現後7時間で陽性となると言われ、早期診断に有効であるとされる11)。一方、正確性は68%に満たないとの報告もある16)。ⅲ.MRI正確性、感受性、特異性とも100%に近い検査である。transvers type compression type図3dtransverse type:高齢者に多く、初期に大腿骨頚部上部皮質に骨折線を有し、しだいに頚部横骨折へと進行する。転位の危険がある。compression type:若年者に多く、頚部下部皮質に硬化像を呈する。安定した骨折である。20)2Blickenstaffらの分類1型:大腿骨頚部下方に骨膜反応、仮骨形成のみ認めるもの。2型:大腿骨頚部に貫通する骨折線を見るが、転位のないもの。3型:完全に転位するもの。21)3Fullertonらの分類1型:tension type。大腿骨頚部の上方に発生、転位の危険のあるもの。2型:compression type。大腿骨頚部の下方に発50