ブックタイトル第10回 大阪学術大会 論文集

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第10回 大阪学術大会 論文集

中学生の野球肘に対する有効的な投球フォーム指導について根屈筋と浅指屈筋が重要な役割を果たしていることが分かっている14)15)。肩関節と肘関節の運動連鎖のイメージ図中学生期の身体的特徴中学生期では、前述した安定化機構とは反対の外反ストレス増強因子も存在する。前腕長を上腕長で除した前腕/上腕比と、生理的外反肘をなすCarrying Angleが大きいことである。実際に前腕/上腕比を年代別で比較した報告があり、小中学生は大学生より有意に大きいことが分かっている。また、Carrying Angleにおいても、中学生は大学生よりも有意に大きいことが分かっている16)。これらの先行研究結果を見ても、中学生の肘関節は大学生と比べて外反ストレスを受けやすい形態であると言える。さらに、中学生期ではHPV 17)を迎えることが多く、1年間で急激に骨が成長する可能性が高い。筋の伸びが骨長軸成長に追いつかない場合は、筋の柔軟性低下を引き起こし、前述した上腕骨内側上顆骨端線離開の原因となる。■考察投球動作において肘外反ストレスが大きくなる要因を2つに大別した。前者は改善のしようがない発育過程の解剖学的な構造であり、後者は改善のしようがある運動学的な投球フォームである。練習量の増加、筋柔軟性の低下に対する直接的なアプローチは除外し、後者の投球フォームについて、外反ストレスを最小限におさえるためのポイントを以下の三つに要約した。図4二つめは、MER前のlate cockingにおいて肩関節外旋・前腕回外動作をゆっくりとした動きで行うことである。このような動きにより肩関節外旋・前腕回外の慣性モーメントを最小限におさえ、肘関節に生じる外反ストレスを軽減する。この慣性モーメント減少を意識した投球動作では、SSCによるパフォーマンスアップは期待できないため、MER後の加速期において、腕の振りのスピードアップを意識することが重要になる。(図5)投球相におけるペース配分のイメージ図一つめは、肘関節への負荷を軽減させるために、肘関節以外のジョイントをフルに活用することである。手関節、肘関節、肩関節、体幹、非投球側股関節とジョイント数が増えれば、肘関節にかかる負荷は分散される。非投球側股関節や体幹の動きはもちろん、肩関節と肘関節の運動連鎖が重要である。ここでは、この上肢の運動連鎖について述べる。MER時に肘下がりや肘突き出しになった場合、肘伸展動作を主として投球するため、肩関節外転角度の増大と肘屈曲角度の減少を意識することが重要である。(図4)図5三つめは、MER直前から肘関節内反トルクである前腕回内屈筋群を適度に緊張させることである。投球動作においてMER時に外反ストレスが最大になるのは避けようがないが、その瞬間に肘が外反しないように、MERよりも前から肘内反トルクの出力を上げることはできる。MER前後で前腕軸が後方傾斜しないように意識することが重要である。(図6)42