ブックタイトル第10回 大阪学術大会 論文集

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概要

第10回 大阪学術大会 論文集

メディカル・ハイドロバッグを使用した整復とコンデイショニングよって異常側の軟組織の張力亢進が起こり様々な障害が発生することになる(図3)。潤滑不全による端面接触機能障害の主因図3機能軸異常による張力亢進ここで従来型の捻挫の定義について考えると「関節が生理的な範囲を超えて運動を強制された場合、関節包や靱帯の一部が損傷されるが、関節の適合性が保たれている状態。」(『標準整形外科学』医学書院)「関節に力が加わっておこるケガのうち、骨折や脱臼を除いたもの、つまりX線(レントゲン)で異常がない関節のケガは捻挫という診断になります。したがって捻挫とはX線でうつらない部分のケガ、ということになります。」(日本整形外科学会のホームページ)といった考え方が主流であり、この概念では捻挫は軟組織の損傷という器質的損傷のみを想定しており、関節構成体相互の位置の転移による機能障害は想定していない。したがって捻挫した関節の整復という概念も発生しないことになる。文献に捻挫に対する処置という記述は見られるが、捻挫の整復という文言を見ることは少ない。しかし、従来型の捻挫の概念は実際の臨床症状に合致しないことが多く、また疑問点も多く存在する。そもそも構造物の器質を守るために外力を受けた時に、構成体相互に遊びを持たせ、ある程度のズレを許容していると考えたほうが合理的である。外力を受けた場合に器質的損傷のみを議論し、機能的失調を議論しないのは不合理であると考える。ではレントゲン画像上で異常が見当たらず、軟組織の損傷も確認できないのになぜ大きな機能障害を持つ例があるのかということになるが、小児肘内症がその例に当たる。また近年腰痛の多くに関与していると考えられている、仙腸関節障害も同様の病態であると考えられている。小児肘内症は手を引っ張るという発生機転があるために亜脱臼に分類されるが、押す、持ち上げる等の動作による外力によっても同様の関節障害は起こり得るのは当然である。これらのことから、日常遭遇する関節異常の大半は外力によって軟組織の損傷を負ったものや、画像診断上確認できない僅かな位置の転位を起こし、関節の適合性を失い機能障害に陥ったものと考えれば現実を説明しやすいと考える。(図4)捻挫の新しい定義の提言外力の作用を受けて軟組織の損傷を受けたものや関節相互間の適合性を失い関節機能不全に陥ったもの時間軸ではなく、外力パターンによる分類1通常型捻挫(認知できる大きさの外力の作用)2微細外力反復型捻挫3静力学的捻挫(転移が僅かであるために僅かな外力でも起こりえる)例えば、・軟組織の損傷のみであれば、なぜ軟組織の治癒日数を過ぎても症状が残る例が多いのか。・レントゲンの画像でどれほどの精度で、位置の適合性の確認ができるのか。・軟組織の損傷が軽微なのに機能障害が大きな例があるのはなぜか。・靱帯を断裂するほどの外力を受けて関節の位置が完璧に元の位置に戻るのかなどである。自然に関節適合性を失うことはない、必ず力の介在がある図4静圧や、微小外力の反復による外力蓄積型の外傷は患者側に外力の作用の認識が少ないために、自然に痛めたという表現になることが多い。しかし、位置の異常が存在する以上、そこには何らかの力が作用したことは当然であり、自然に(力の作用なしに)位置の異常が発生するということは物理学上あり33