ブックタイトル第10回 大阪学術大会 論文集

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概要

第10回 大阪学術大会 論文集

Effect of vibration on the two-point discrimination threshold遠隔振動刺激が触2点閾に及ぼす効果することを見出した.これらの結果から,SRで体性感覚の運動機能を改善することができれば患者の早期社会復帰が可能で,筋や関節の外傷や脳卒中患者への応用が期待できると述べている.またWellsら(2005)9)は,健康な若者や老人の足底部に様々なノイズを与えて極限法での2点閾を測定したところ,加齢に伴う2点閾の増大はバランス感覚の低下にも関連し,SRによって身体の動揺性を低減し安定させること,歩行機能障害の一部を軽減させる効果があることを示唆している.Kuritaら(2011)10)は健常者を対象として,極限法を用いて測定した指先での2点閾が,指先着用型の振動刺激の提示によって低下すること,および運動技能を向上させることを報告している.このように,2点閾を低下させることは実用的にも臨床上にも有用である.SRを利用して2点閾を改善させる従来の研究では,2点閾の測定に,極限法が使用されてきた.極限法は試行回数が比較的少なくてすむ点やデータ処理が簡便であるという利点があるが,一方で被験者が慣れにより応答を予測してしまう可能性を排除できない欠点を持つ(秋田ら,1992 11)).また,ノイズとして付加する振動刺激の提示方法は局所的で,振動刺激を与えた部位の近傍での触2点閾の変化についての検討が行われてきた.振動刺激が触覚の閾値に及ぼす効果の実用性,あるいは臨床応用を考えた場合,振動刺激の提示はより簡便な方法が求められる.また,広汎な部位を同時に刺激することにより,広汎な部位での触覚の改善が同時に生ずることが期待される.そこで本実験では,手背部全体に加えた振動刺激が,遠隔部である第2指手掌部での触2点閾に及ぼす効果について恒常法を用いて検討した.■実験1触2点閾には調整法,極限法,恒常法の3種類があり調整法は精度が悪く通常使用されない.極限法は刺激を一定の段階で少しずつ変化させながらその刺激に対する被験者の判断を求め被験者の判断が特定の変化をする点を決定するもので先行研究においても使用されている.恒常法はあらかじめ決定しておいた数段階の刺激をランダムな順序でそれぞれ同回数反復呈示し各刺激に対する被験者の判断を求める方法で精度が高いと言われるが複数回提示が必要な分,時間がかかるという欠点を持っている.そこで極限法と恒常法の精度の違いを比較し恒常法の適正な提示回数を調べることを目的に以下の予備実験を行った.方法被験者は男性6名(年齢35.3±13.69)で利き手が右の男性.装置はデジタルノギス(フリーダム,cw-80216m)に鍼灸鍼(セイリンディスポ鍼LタイプNo.4コイル状の鍼柄直径0.20mm)を取り付けたもので2点閾の測定を行った.手続きとして2点閾の測定部位は非利き手の左手を使用し第2指の第1関節指腹部にまずは極限法(上昇,下降の各系列10試行を擬似ランダム)での2点閾の測定をし,被験者の判断の信頼性をチェックするため系列中に1点のみの試行を挟み,試行数は上昇系列10試行,下降系列10試行,計20試行を実施した.次に,恒常法での2点閾の測定値は7条件(0.0,0.2,0.4,0.6,0.8,1.0,1.5mm)とし,刺激時間は2sec,試行間間隔は3sec,試行数は15試行で7条件(2点間距離)を,1ブロックに7試行で1セッション=15施行×7条件=105試行した.また統計処理時は1点のみ刺激する試行が誤反応の場合,ブロックのデータは結果の処理から除外し,極限法での2点閾は上昇系列および下降系列で求めた2点閾の値の平均値とした.恒常法での2点閾の算出には最小自乗法を用いて回帰直線を求め,正答率が50%となる2点間距離を2点閾とした.結果極限法と恒常法による2点閾の比較では恒常法の方が2点閾が小さい傾向を示したが,平均値の差には有意差は検出できなかった(ウィルコクソン符号付き順位和検定,z=1.5724,p=0.12).また,恒常法で求めた2点閾の方が極限法に比べ分散が小さい傾向を示し,分散の差は有意な傾向(F(5,5)=6.4379,p=0.06)を示した.また恒常法の欠点とされている複数回提示が必要なため,より時間がかかる点を検討することを目的に,恒常法の測定回数による触2点閾の変動について調べた.恒常法を実施する際の計測試行数を決定するために,5回,7回,10回,15回の試行数で求めた2点閾を比較した.結果,試行数のグループ間に有意な差は認められなかった(1元配置の分散分析,F(3,20)=0.0092).通常15回施行が標準とされているが(大山ら,1994)12),結果は7回施行と10回施行,15回施行の2点閾には有意な差が認められなかった.よって以下の実験では恒常法での各条件での2点閾の測定回数として,10回を採用した.20