ブックタイトル第9回 大阪学術大会論文集 2015

ページ
28/58

このページは 第9回 大阪学術大会論文集 2015 の電子ブックに掲載されている28ページの概要です。
秒後に電子ブックの対象ページへ移動します。
「ブックを開く」ボタンをクリックすると今すぐブックを開きます。

ActiBookアプリアイコンActiBookアプリをダウンロード(無償)

  • Available on the Appstore
  • Available on the Google play
  • Available on the Windows Store

概要

第9回 大阪学術大会論文集 2015

国立富山大学医学部大学院柔道整復学講座における研究~柔整手技鎮痛効果の一報~児玉香菜絵、高本考一、浦川将、酒井重数、小野武年、西条寿夫富山大学柔道整復学講座■キーワード柔道整復学講座、エビデンス、NIRS(near-infraredspectroscopy)■緒言経験に裏付けられた伝統医療としての柔道整復術は国民から高い評価を得ている一方、柔道整復術の科学的解明、とりわけ生理学的解明は、未開拓と言わざるを得ない。また、我が国では、超高齢社会を迎え、著しい社会状況の変化に加え、健康寿命の延伸を目的とした生涯スポーツ振興が叫ばれるなか、柔道整復師に対する国民の期待は、従来の外傷治療の専門家からアスレティックトレーナー、高齢者に対する機能訓練、地域における介護予防リーダー等々多岐に及び、かつ高度な知識と技術が要求されている。これら国民の高まるニーズに応えるためには、柔整施術の妥当性を、様々な先端医科学的手法を用いて立証し、柔整施術有効性の根拠を示す必要がある。そこで、大阪府柔道整復師会専門学校を卒業し、現在、大学院生として学んでいる富山大学大学院柔道整復学講座を紹介すると共に、私の研究内容について簡単に報告する。■研究部門柔整講座は、平成21年に(公社)日本柔道整復師会の全面的支援を受け開講した。研究領域は神経生理学的分野である。本講座は富山大学医学部の前身である富山医科薬科大学の小野武年学長並びに富山大学生命科学先端研究センター長、システム情動科学講座の西条寿夫教授お二人の全面的なご理解とご指導を受け開講した。現在スタッフは、小野武年教授、西条寿夫指導教授、浦川将准教授、高本考一助教、酒井重数主任研究員の5名に加え、5名の柔道整復師が大学院生として研究活動を行っている。■富山大学の理念富山大学は、地域と世界の発展に寄与する基礎研究のみならず、ユーラシア大陸諸国との交流を通じ、東洋と西洋の英知と科学の融合即ち「知の東西融合」を目指し、フロンティア的学術活動に努めることを理念としている。国立大学で初めて開設された柔道整復の研究機関は、我が国固有の伝統医学であり、且つ明治期以降、西洋医学を取り入れて発展してきた柔道整復術を解明する最適な環境であることが大学の理念を背景としている。■研究内容本研究室では、柔道整復師による施術、特に後療法(手技療法および罨法、電療)の科学的解明であり、柔道整復師による施術の妥当性を証明するものである。具体的には、1単なる疲れ、肩こり、腰痛、体調不調の科学的証明、2筋肉疲労、負傷原因不明の筋肉痛の科学的解明、3柔整施術の長期、頻回施術の必要性の証明、4柔整施術の医療費抑制効果の検討、5柔整施術の標準化・ガイドライン作成などを行っている。1単なる疲れ、肩こり、腰痛、体調不調の科学的証明、2筋肉疲労、負傷原因不明の筋肉痛の科学的解明には、亜急性損傷の証明や筋原性疼痛の証明が先見事項であり、そのため生化学的タンパク定量法での筋代謝酵素解析による研究やMREによる亜急性損傷部、筋原性疼痛変性部の画像化、筋硬度を定量化する研究などを行っている。また、3柔整施術の長期、頻回施術の必要性を証明するため、高齢者を対象とした研究を行っている。高齢者の運動器系の疼痛は、脳の変化(脳萎縮)も併発し、その部位の脳機能回復には、保存的な刺激療法(柔整後療法)が有効であることが分かっている。その脳萎縮を回復させるためには頻回な施術、機能訓練が必要であることが示唆されており、柔道整復施術の回数制限は、有効な刺激療法の機会を減らす危険性がある。高齢者への施術回数制限は、健康で安心な在宅生活継続の弊害を生じさせる危険性がある。さらに、4柔整施術の必要性の根拠を示すため、並びに5柔整施術の標準化・ガイドライン作成のために柔整施術の治療効果の証明を明らかにする必要がある。そこで、当柔整講座では、メタボローム解析による組織学的治癒機序の解明に加えてエビデンスレベルの高い臨床研究、大規模多施設ランダム化比較試験を実施している。■私の研究課題次に、私の研究テーマについて報告する。私は現在、柔整施術の効果のなかで、特に手技療法の25