ブックタイトル第8回 大阪学術大会論文集

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概要

第8回 大阪学術大会論文集

青壮年における驚愕反応が及ぼす快および不快情動の影響増井裕亮大阪府柔道整復師会専門学校■キーワード情動、先行刺激抑制、視覚、聴覚■はじめに嫌悪刺激は負の情動を引き起こし、報酬刺激は正の情動を引き起こす。これらの情動には加算効果が認められ、正の情動発生時に、他の正の情動喚起刺激を提示すると、情動の非発生時に比べ、より大きな情動反応が引き起こされ、他方、負の情動発生時に正の情動喚起刺激を提示すると、引き起こされる情動反応の大きさは小さくなることが示唆される(Langら〈1990〉)。突然の強い刺激は驚愕反応を引き起こすが、驚愕反応は嫌悪反応の一つである。従って、もし上記の仮説が正しいならば、負の情動状態では驚愕反応が促進され、一方、正の情動状態では驚愕反応が抑制されることが考えられる。Vranaら(1988)は20名の学生に、不快、中性、快の情動を引き起こす36枚のスライドを提示し、その間に驚愕刺激として95dBの白色雑音を50ms提示した。その結果、驚愕反応の大きさは不快画像提示時に大きく、快画像では小さかった。Bradleyら(1990)は36名の被験者に一連のスライドを提示した。スライドは快、中性、不快の3つに分類され、それぞれの分類に属する各9枚ずつの合計27枚のスライドを各2回提示した(計54試行)。驚愕刺激として、光および音刺激を、6sec間のスライドの提示中およびスライド提示間に提示した。結果は、驚愕刺激の種類にかかわらず、画像の情動価によって驚愕反応が変化する事が示された。驚愕反応は、直前に弱い刺激を提示すると抑制される(先行刺激抑制効果)。この効果はヒトおよび動物で広く観察される安定した現象であることが知られている。そこで本実験では、快、中性、不快の3種類の情動喚起刺激を先行刺激とし、驚愕刺激単独提示時の反応の大きさと比較し、これら3条件での驚愕反応の大きさがどのように変化するのかについて調べた。中性の先行刺激提示条件に比べ、もし、快の先行刺激提示条件での驚愕反応が抑制され、逆に不快の先行刺激提示条件での驚愕反応が増大するならば、情動が驚愕刺激に影響を及ぼすことを示すことができる。もし、本実験において一定の成果が得られるならば、ストレス等の嫌悪性反応を抑制する新たな方法となる可能性があり、臨床応用への新たな道が開けることとなる。例えば、外傷により骨折、脱臼を引き起こした後の回復過程で後療法を行う場合や、固定により拘縮を起こした際に可動域訓練を行う場合など、治療を行う上で痛みを伴う場合が考えられる。このような場合に患者が感じる負の情動を抑制または軽減できる方法があるならば、非常に有効であると考えられる。■方法◆被験者視力および聴力が正常な男子学生8名(平均年齢26.25±5.6歳)を用いて実験を行った。実験装置以上の実験では、背景となる情動状態を発生させるため、快または不快な画像(IAPSスライド)を提示するという手続きが採用されている。しかしながら、画像の提示による情動の喚起時には、情動の喚起のみならず、視覚情報の処理に関わる多くの複雑な処理過程が同時に進行しているため、得られた効果が、快または不快な情動によって引き起こされたものかどうかについては詳細な検討が必要である。本実験では、情動喚起のための刺激として、快または不快の情動価を持たせた単純な視覚刺激を使うことによって、視覚情報処理自身が及ぼす影響を排除した条件で、情動が驚愕反応に及ぼす効果について調べた。図130